レッスン方針

 

モダンアクティング

《演技レッスン案内》

  • スタニスラフスキーやメソッド、マイズナー、アドラーの方法を幅広く参考にしながら、「こころ」と「からだ」と「あたま」のバランスの取れた演技感覚を身につけていきます。
  • 独自の方法により、日本人俳優の苦手とする「見る・聞く・しゃべる・交流する」能力を、徹底的に身につけていきます。
  • 確実にシーンを成立させるための具体的、実践的な技術を磨き、世界レベルの俳優たちと共演しても違和感のない演技力を身につけていきます。

演技レッスン方針

スタニスラフスキーは晩年、ステラ・アドラーたちへ、俳優教育のシステムとして40の要素を分類して示したそうです。しかし、ここでは、話をよりわかりやすくするために「人間がそこにいる!」と信じられる演技を観る体験をした人は、その演技に少なくとも以下の3つの要素が存在していたということは、認めざるを得ないだろうというところから、お話しさせて下さい。

  • 相手役・周りの事物・空間を見、聞き、感じ、相手に反応し、しゃべり、交流できていること。つまり、人間の持つ知覚が正常に働いている……というリアリティ。
  • 1.によってもたらされた衝動・思考・判断によって「したい!」「するべき!」と感じた行動が自由にできていること。つまり、正常な身体感覚を持った肉体がそこにある……というリアリティ。
  • 行動や内面性が、予め明らかになっている状況やドラマの流れの変化と食い違っていないと信じられること。つまり、人間だけでなくその役の人物がそこにいる……というリアリティ。

こう書いてしまうと、何だか、演技はとてもシンプルで簡単なことのように思われる方もいらっしゃるかもしれません。
何しろスタニスラフスキーの言う要素は、(演技の要素ではなく俳優訓練の要素とは言え)40個!!ですから……。

でも……実は、この3つのことだけでも、そのすべてを同時に・瞬間的に果たしていくことは、俳優たちにとっては大変難しいことで、(実は、サーカスや中国雑技団のアクロバットやジャグリングほど!)一定期間、しっかりとした指導の下に訓練しないと、なかなか身につくものではありません。

何人かの著名な演出家も、日本人俳優の最大の(致命的な)問題として、「見る・聞く能力」の欠落を挙げているようです。

実際、「見る・聞く」ができていないどころか、「それがいったいどういうことなのか……」「どういう感覚なのか……」全く認識されていない……それを改善しようとした痕跡すら見えない公演や演技レッスンで、日本はあふれています。

逆に、モーガン・フリーマンやロバート・デニーロなどの多くの名優たちは、「アクターズスタジオ・インタビュー」などに出演した際「演技にとって一番大切なものは……?」という質問に対し、「聞くことだ。」「聞くことがすべてだ。」と答えています。

アクター・プラントでの私の指導では……まず、この「見、聞き、しゃべり、交流する」ということを、身体感覚・想像力・個々の繊細な感情を阻害しないよう配慮しつつ、徹底的に訓練し身につけていきます。

そのためには、後述するいくつかの訓練(身体的・心理的開放と能動性を獲得し、感覚を鋭敏にするためのもの)を、時としてサーキット・トレーニングのような形式で交えながら、主としては……マイズナーのレピテション・エクササイズ(リピート・エクササイズ)を改良したものと決められた短いセリフの反復を行っていきます。

※レピテション・エクササイズについては、レッスンで詳しく解説します。

「見、聞き、しゃべり交流する」という感覚が十分備わってきた上で……②の「行動できる身体の感覚」と③の「状況や役の内面性を理解し想像する力」を、ミニ・シーンを利用して確認しつつ身につけていきます。

その際には、スタニスラフスキー・マイズナー・アドラー・ストラスバーグといった先人の方法を考慮しつつ、その場の生徒に一番有効であろうと考えられる方法を選択(または創造)していきます。

以上のような過程を経て、十分①が身につき、②や③に対する理解も不足なく進んだことが見極められた後、いよいよ、本格的なシーンづくりに入っていきます。

文責・大塚千尋